しあわせな結末!「曾根崎心中」 著者:角田光代(原作:近松門左衛門)を読みました
「曾根崎心中」
著者: 角田光代 原作: 近松門左衛門 発行:リトルモア
表紙カバーの「初(お初)」の絵がすばらしいです!!
裏表紙カバーの「徳兵衛」の絵もすばらしいです!!
遊女・初(はつ)
醤油屋の手代・徳兵衛
時は元禄16年(1703年)。
場所は大阪・曾根崎の露天神社の森。
「心中(しんじゅう)」
心中とは愛し合った男女二人が一緒に死ぬことです。自分たちのいのちを自分たちで絶つことです。「曾根崎心中(そねざきしんじゅう)」は元禄16年(1703年)4月7日、遊女・初と醤油屋の手代・徳兵衛とが大阪・曾根崎の露天神の森で情死した事件を近松門左衛門が脚色した世話浄瑠璃です。その近松門左衛門の原作を直木賞作家・角田光代さんが恋愛小説として現代に鮮やかに甦らせました。※ちなみに僕の家は戦後すぐまで醤油屋でした
傑作です!
この角田光代さんの「曾根崎心中」は絶品でした!
めくるめく思いで僕はページをめくり続けました。現代文で文量も少なく、余白も多かったのでとても読みやすく、一気に読み上げましたが、この作品ほど芸術的で美しい小説に僕は今まで出会ったことがありませんでした。
如いて言えば川端康成の「伊豆の踊子」なんですが、淡い初恋がテーマの伊豆の踊子とは違い、この「角田曾根崎心中」はピュアなのに、身悶えるほど烈しく、狂おしくストーリーが進んでゆきます。情死(心中)という結末に向けて、お初と徳兵衛がまるで運命に弄ばれるかのように突き進む様は狂気のように思えます。街が、世の中が、その他の登場人物が、すべて追い詰められながらも愛を守り通し、恋に殉じる二人の"結末"に向けてグルグルグルグルと渦巻くように文中を流れ去っていきます。
近松の原作を読んだことがないので比較できないのが残念ですが、角田さんが描いた「曾根崎心中」はセンチで、ロマンティックで、清らかかつ艶やかで本当に素晴らしかったです!僕はこの本をパタンと閉じた時にジーンとしました、お初と徳兵衛は"しあわせ"だったんだ!この結末は"しあわせな結末"だったんだと。無垢な若い男女の命がけの恋が最後に成就した喜ばしい物語なんだと。
あの世でも、そして来世でも、ふたりはしあわせになるはずです。ふたりの愛は見事に完結しました!
お初と徳兵衛の永遠の愛。角田版「曾根崎心中」はうつくしくやわらかい日本語で
僕らにこの愛の形を示してくれました。角田さん、お見事です!そして、偉大なり近松門左衛門!!
もしもあんたに恋とは何かわかる日がきたら、そのとき、わからせてくれたその男にだけ、あんたの傷、あの傷を見せるんや。その男はな、きっとあんたの傷をきれいやと言うてくれる。
『曾根崎心中』角田光代(原作:近松門左衛門)
愛し方も
死に方も、
自分で決める。
江戸時代、元禄期の大坂で人々が狂喜したように、激烈な恋の物語が今また私たちの心を掻きたてる。
運命の恋をまっとうする男女の生きざまは、時代を超えて、美しく残酷に、立ち上がる ―― 。
300年前、人形浄瑠璃の世界に“心中もの”の大流行を巻き起こした近松の代表作「曾根崎心中」を、直木賞作家・角田光代が現代に甦らせる!
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これが恋か。初は思った。これが、恋か。
ほほえみながら、泣きながら、高笑いしながら、物思いにふけりながら、不安に顔をゆがめながら、嫉妬に胸を焦がしながら、記憶に指先まで浸りながら、幾度も幾度も、思った。
これが、これが、これが、恋。
(本文より)
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出会ってしまった心を、止めることはできない。
これが、恋のかたち。
幾世の時を超え、いま究極の恋物語がふたたび始まる。
(リトルモアブックスホームページより引用)
カバーを外しても、真っ赤な色が印象的で、ものすごく出来映えの良い本です。愛蔵するに相応しいつくりです!!
赤と黒の対照がすばらしいです!
さあ、あなたもこの絶品をぜひ読んで、人間という生き物の持つ滋味を味わってみてください。近松門左衛門は間違いなくあなたに問い掛けます、「人間とは何だと思う?私はあなたにじっくり考えてみて欲しいんだ。」と近松はあなたに問い掛けてきます。
出版社・リトルモアさんがこの世に生み出した傑作小説です。
読み終えて、カバンにしまったらこんな感じになりました。お初は本当にうつくしい!この美しさは永遠です!!!!
▼関連サイト
杉本文楽 曾根崎心中 | ストーリー
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