日本の新興宗教 大衆思想運動の歴史と論理は宗教社会学者 高木宏夫の名著!
新興宗教は、大衆思想運動を組織的に展開し、大衆のエネルギーを結集することによって大教団となった!新興宗教を立ち上げたい人は絶対読むべき!!
日本の新興宗教 大衆思想運動の歴史と論理 高木宏夫著 岩波新書
神田古書店街 駿河台下交差点角「三茶書房」で購入
令和6年(2024年)7月25日 村内伸弘撮影
教祖になりたい人は絶対読むべき!
令和6年。今年の夏の一冊としてこの古本を買っていたんですが、夏が終わる前になんとか一通り読めました!オレンジ色の線を何度も何度も引きながら読みました。宗教社会学や社会運動を学びたい人はもちろんのこと、新しい宗教を創設したい人はマストです、絶対に読んでください。
60年以上も前、昭和34年/1959年の初版本なので一部の活字が旧字だったり、マルキシズムや共産主義、革新陣営とかの単語が頻繁に出てきたりはしますが、新興宗教に関する分析や洞察は圧巻です!まったく色あせていません。というか、当時の新興宗教の教団や教祖たちを見事に描写し切っています。時代背景や社会的な状況と絡めて、ぐいぐい掘り下げていってます。
宗教は理想社会・地上天国建設という大きな理想を掲げている。理想実現のため大衆の協力に訴え、大衆思想運動となって初めて宗教としての面目を発揮する!
宗教。それぞれの教団や教祖が信者の心をつかんで大発展したり、信者に見捨てられて一気に没落したりなどなどの一大叙事詩です。この本の中で描かれている彼らや大衆の悲喜こもごもが僕の心に染み入りました。
宗教と人間。
人間と宗教。人間と孤独。
宗教はわれわれ人間にとって、一旦何なのか?
人間には宗教が本当に必要なのか?
さびしい人間や不安な人間が一人もいない理想的な世の中は実現できるのか?
苦しんだり、悩んだりしない人生をすべての人が送ることができる時代をどう作り上げていくべきなのか?
いろいろ考えさせられました。
岩波新書
日本の新興宗教 大衆思想運動の歴史と論理
高木 宏夫 著
新興宗教は、宗教の中の特異なもの、低俗な偽宗教という考え方が一般である。しかしいかなる宗教もそれが発生したときは新興宗教と呼びうる。もっぱら教理の批判に集中していた従来の科学的研究とは違い、日本の主な大衆思想運動の中に新興宗教を位置づけ検討する。
岩波書店公式サイトより引用
以下、この本で僕が特に感じた点をいくつか挙げてみます。ぜひぜひご参考にどうぞ
「日本の新興宗教」の中身
・どの点からみても既存教団と新興宗教とは本質的に同一である。むしろ新興宗教の方が宗教運動としては本来の在り方を示している。
・大衆思想運動を成功させるには、大衆の要求を十分に知りかつそれにこたえ、大衆の生活および彼らの当面している問題の中に思想を具体化して与え、さらに日常生活の実践を通してこれを身につけさせることが必要なのである。
・新興宗教が多くの人びとから教団と認められるほどの規模に発展するには、天理教や金光教をみてもわかるように、かならず特定の社会的な条件が必要である。その条件というのは、多くの人びとがさきゆき不安を感じるということであり、大教団の形成には、誰しもがさきゆき不安を感じる時代になることが必要である。
・どんな時代にも、さきゆき不安を感じている個人があり、教祖的な人間が存在する。きわめて多数の人びとがさきゆき不安を感じ、将来に希望がもてなくなるような社会的な条件が生まれると、各教団は飛躍的な発展をとげ、中でもその時代の要求に合致した教団は爆発的な発展をとげる。
・大衆活動なくしては大教団となりえない。
・新興宗教は、大衆の宗教思想と密着しなければならない。
・信者に対して教団は、人助けや世を救う行すなわち導きを要求する。布教師は、これを強制されたという気持ちではなく、自分も救われたのだからと自発的・積極的に奉仕の気持ちで出かけてゆく。その背後では、教団の豪壮な建築や膨大な信者数や教団の出している諸種の印刷物が、この布教活動を助けている。
・信者になると、心によりどころのできた人間特有の明るさができてくる。教団の教える生活規律を実行するので、生活に秩序が生まれる。また、人に接する態度、社会をみる態度が変わってくる。
・教団がさらに大きくなって、教祖のほとんどすべての機能を組織がひきうけるようになれば、もはや教祖としての個人的な能力は必要ないということになる。というのは、教理・思想が組織を動かすからである。
・教団は大衆活動の中で発展してきた。
・教祖ははじめから特殊の能力をもつ者として位置づけられているのであって、同じ仲間の中から能力ありと認められ、選挙によってその地位につけられたのではない。教祖はつねに教団において最高の能力ある者と認められたのであるから教祖の地位は絶対である。
・新興宗教の指導方法は、大衆路線の一言ですべてを言い尽くすことができる。まず、誠心誠意大衆のために奉仕するというあり方、み方、やり方をとっている。大衆の要求に答え、同時に大衆からしっかり学びとるという態度である。
・大教団はいずれもなんらかの意味で大衆集会をもっている。
・新興宗教の中では、内外の批判にこたえて教理の訂正を行い具体化をすすめてきた教団だけが、大きい発展を示している。
・新興宗教では教祖のことばは絶対である。正統とされている解釈と異なった説をたてれば、やはり異端邪説としてしりぞけられ、教団から追放される。
・社会運動にあっては、大衆の要求にこたえること自体が、広い意味での人生相談であり生活相談である。
・新興宗教のように、この教えを広めることによって、あらゆる悩みを克服し、万人が幸福になることができるのだという大きな理想に燃え、この大きな目的の実現のために熱情をこめて他の人たちに働きかけ、サークルに誘う。
・新興宗教では、経験の中で宣伝と煽動との分業の重要性をつかみとり、それを制度化している。何十万という積極的な煽動家を擁して、これを間断なく活動させているということこそ、新興宗教が大衆の中にかたく根を下ろしているもっとも重要な原因の一つである。
・指導者に人間としての信頼がなければ、いかなる大衆運動も成功しえないことを、宗教運動も革命運動も実証している。
本書「日本の新興宗教 大衆思想運動の歴史と論理」より引用
以上、一部ですが上記が僕がこの本の中で刺激や感銘を受けた主な内容(特に赤強調文字部分)でした。皆さんもこの本を買って、ぜひ自分自身の視点や感覚で日本の新興宗教=人間そのものの営みについて勉強してみてください
最初に書きましたが、宗教社会学や社会運動を学びたい人はもちろんのこと、新しい宗教を創設して世の中の人びとを救いたい人は絶対に買って読んでくださいね。理想実現のための大衆思想運動がいかに重要か、ホント心に響きますよ!!
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